一人の女神が素敵な物語を書いてくださいました。ハートにあたたかく響く物語・・・是非読んでみてくださいね。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 「ある女神の物語」 Twelve Feathers多香子さん作
その女神は、あらゆる豊かさと、限りない力を持って、生まれました。
彼女は世界に素晴らしいものをもたらすためにやってきたのです。
彼女は、最初に降り立った世界で、生まれてきた目的のとおりに、輝き、世界に豊かさをもたらそうとしました。
ところが、あろうことか、「いらない」と言われたのです。
彼女は戸惑いました。
その時彼女の周りにいた人々は、彼女が女神であることにに気づかず、彼女が差し出しているものの美しさ、尊さにも気づかなかったのです。
それでも彼女は何度も差し出しました。与えることは、彼女の本性だったからです。彼女の内にある豊かさと愛は限りがなくて、分かち合わずにはいられないのでした。
時には、喜んで受け取ってくれる人もいました。
けれど、受け取らない人もいました。
「それじゃなくて、もっと違うものを」と要求してくる人もいました。
女神は戸惑い続けました。
いつの間にか、戸惑いの中で、彼女は自分が本来持っていた「素晴らしいもの」について、信頼を失っていきました。
そして、人が「良しとするもの」を差し出そうと、努力し始めました。
彼女は大変な努力をして、それを追い求め続けました。
ところが、努力すればするほど、「求められているものを与えること」は、難しくなっていくようでした。
いつの間にか、彼女はすっかり疲れていました。
その時、「あなたの愛を下さい」と言った人がいました。
彼女は嬉しくなりました。求めて欲しかったからです。
その人は次に、「あなたの時間を下さい」と言いました。
彼女はそれも喜んで与えました。求めて欲しかったからです。
その人はさらに、「誓いを下さい」と言いました。
彼女は喜んで誓いました。必要としてくれる人がいることが嬉しかったからです。
そうして、彼女は「ひとりの人のもの」になりました。
ふと気がつくと、その人はもう、彼女に何も求めなくなっていました。手に入れてしまったからです。
彼女は再び戸惑いました。もう一度求めて欲しかったので、何をすれば相手が求めてくれるのか、必死で探りました。
「駆け引き」と呼ばれるものを彼女はたくさん学び、試しました。
けれど、それは彼女の心を満たさず、虚しさを育てて行くだけでした。
いつの間にか、彼女は恨むようになっていました。
求めてくれない相手を。
そして、求めてもらえない自分には、価値がないのだと思いこんでしまったのでした。
その間中ずっと、彼女の中では、生まれてきた時と同じく、あらゆる豊かさと限りない力が、渦を巻いて存在していました。
それは輝かしいもの、世界中のどんな宝を合わせたよりも、ずっと尊いものだったのです。
「疲れた女」になってしまった彼女は、そのことを忘れていました。
ある人に、「ハートに火をつけて」と言われるまでは。
その言葉が、彼女の中で、忘れていた何かを呼び覚ましました。
火? 私の中に火がつく?
そんなことがありえたのか……!!!
忘れていたのは、彼女自身の中にすべての根源があること、彼女の外にあるものがどんなに素晴らしく見えたとしても、彼女の中にあるものもまた、同じくらい素晴らしいのだということ。
生きる理由は、外ではなく、内にあったのだということ。
ハートに火をつけると、その火は生き生きと育ち、神聖な魔力を得て、彼女のからだ全体を満たし始めました。
死にかけていたものが甦りました。
春、夏、秋、冬のサイクルが、何度も彼女の中で起こりました。生-死-再生、ダイナミックな変化、豊かな調和、そのすべてが彼女の中にありました。
彼女は、女神であった自分をおもい出しました。
与えることは駆け引きの一部ではなく、
受け取ってもらえないことは損失ではなく、
何があっても、彼女の中の豊かさは損なわれることはない。
彼女の中には、あたたかい愛の炎がありました。
それは、彼女の存在そのものだったのです。
彼女は涙を流し、
それから、ほほえんで、
再び、与えることを始めました。
すると、世界はまたたく間に、美しさと豊かさのあふれた場所になっていきました。
その女神は、私であり、あなたです。